何度でもキミに恋をする(旧題:もう一度キミと青春を)
「そう?俺のスタンスは、“こんなにしつこく付き纏ってキモがられてないだけで嬉しい”だからさ」


フハハっと笑って照れ臭そうに鼻を掻く。


「本当にありがとう、赤嶺くん…」


「お礼を言われるようなことは何も。むしろごめんな」


「そんな、何も悪くないよ。謝らないで」


首をブンブン振って否定すると、また笑ってくれた。


「今のままだとどうしても俺とは付き合ってくれなそうだし、もっと頑張るわ。とりあえず、クレープ屋行こうぜ」


「ごめんね、ありがとう。行こっか」


「謝るの禁止〜。次謝ったら罰金100円〜」


ふにゃふにゃ〜っと笑って手を差し出してくる。


「えっ、もう罰金?」


「ちげーよ。手、繋ぎたいなと思って。嫌?」


「……」


…嫌だとは思わなかった。


そんな自分に驚いて、同時に悲しくもあった。


心の奥底では蒼空よりも赤嶺くんを求めてるんじゃないか。


想い続けて苦しいままよりも、今すぐ付き合える楽な道を選びたがってるんじゃないか。


赤嶺くんを“逃げ道”にしようとする、自分本位な自分がいる。


…今、彼の手をとってしまったら、この先どうなる?


思わせぶりなことして、赤嶺くんを傷つけるだけじゃない?


もし蒼空が私のことを思い出したら、私はきっと蒼空を選ぶ。


それなのに赤嶺くんと付き合うことはできないし、だから手を繫ぐのもだめ。


なんだけど…。


“誰?”


“嫌がらせしてたんだろ”


“話しかけないでもらえるかな”


忘れられたらいいのに。


「恋を忘れるためには新しい恋だって」


ゆっくり、彼に手を伸ばす。


「よし、行こ」


「うん」


結局、甘えてしまった。


赤嶺くんの優しさ、気持ちを利用して…。


ダメな人間だ、私は…。


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