何度でもキミに恋をする(旧題:もう一度キミと青春を)
蒼空自身も困惑しているのか、呆然と立ち尽くしている。


それに、今まで私との会話をすべて突っぱねてきたのに、どうして好きなジャンルを聞いてくれたの?


私のこと、思い出したの…?


でも、だとしたら冷たいままなのはおかしいよね…?


「…なんでかわかんないけど、そんな気がしただけ」


「そんな気がしたって…。どういうこと?私のこと覚えてるの?」


もう少しで蒼空の手に触れられる距離まで来たのに。


この距離がもどかしい。


「…覚えてない」


「でも、だったらなんで」


「…知らない。そっちだって、俺のことを忘れたらいいんじゃない?平等だろ?」


蒼空が身体の向きを変えて椅子に座り直した。


その背中に向かって呟く。


「忘れたくても忘れられないから苦しいんだよ…。蒼空はいいよね、一方的に全部忘れたことにして逃げればいいもんね」


覚えているのかも、という期待を抱かせて、結局突き放して、何がしたいの。


いつもは私の存在を無視するのに、今日だけは会話してくれて、期待しちゃったじゃん。


期待した私がバカなんだけどさ…。


もしかしたら覚えてるのかもとか、気持ちが少しかわったのかもとか、誤解が解けたのかもとか、考えた私がバカみたい。
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