もう一度キミと青春を。
「覚えてない。ただ、最近夢を見る」


今日の蒼空はやけに素直に私と話してくれる。


どうして?


「紬から聞いてる話と、俺の夢はところどころ違う」


蒼空が私の方を向いてポツリポツリと言葉を紡ぐ。


私が知っている紡ぎ方ではなく、表情が乏しくて何を思っているのかはわからない。


それでも、一言も聞き漏らしたくなくて、じっと耳を傾ける。


「紬から聞いた話が夢に出てくる。森の中にある滝の話とか、夏祭りの話とか。でも、その時隣にいるのは紬じゃなくて森下さんなんだ」


…っ!!!


「それ…、夢じゃ―」


「紬に聞いたら、ただの夢だって言われたから夢なんだろうけど」


「ちがうよ…!それ、夢じゃない…っ」


現実だよ…っ。


蒼空の記憶には私が残っているんだ。


記憶が消えたわけじゃない。


思い出せないだけなんだ。
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