もう一度キミと青春を。

泡沫

蒼空は病院に運ばれ、しばらく入院することになったそう。


「花純、大丈夫?」


放課後になっても、手の震えが止まらない。


あの痛がり方は何…?


記憶喪失と何か関係があるの…?


「…保健室の先生も、詳しいことはわかんないんだってさ」


「…そっか…」


“やく、そ…く”
“いっし……に…い…よ……”
“か…すみ……”
“て…ばな……さな…い”


朦朧とする意識の中で発してくれた言葉が脳裏にこびりついて消えない。


「桐谷くん、花純のこと覚えてたんだね。思い出せないだけで、桐谷くんの心には花純がいるんだね」


「……っ…」


優しい手で頭を撫でてくれる奏。


「やめてよ…、泣いちゃう…」


滲む視界の端で、奏が笑った。


「泣いてるから慰めてるんだよ。桐谷くんの意識が戻ったら、一緒にお見舞い行こう?」


「うん…」


「今日はもう帰りな?ずっと学校にいてもツラいでしょ?」


…家に帰ったら親がいる。


こんな日にあの人たちと会話するのは嫌だ。
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