何度でもキミに恋をする(旧題:もう一度キミと青春を)
「桐谷くんね、夢の話をしてたよ。倒れる前」


「夢?」


「うん。夢に花純が出てくるって話」


動揺したように蒼空の目が泳ぐ。


今、蒼空は何を思ってるの?


記憶喪失になった原因は何?


私のこと、嫌いだったんじゃないの?


どうして今は拒絶しないの?


「…蒼空…」


一歩、また一歩、ゆっくりと蒼空へ近づく。


蒼空に触れたい。


蒼空の温もりを感じたい。


「意識を失う直前、“花純”って呼んでくれて嬉しかったよ」


震える指先で、蒼空の手に触れる。


振り払われることはなかった。


能面のような顔から、徐々に優しい表情が戻ってくる。


「…懐かしい」


「…お…思い出したの…?」


ゆっくりと首を横に振る。


「理由はわからない。でも、懐かしい」


蒼空の手が私の手を包み込むように重なった。
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