もう一度キミと青春を。
「…心に傷を負った仲間」


蒼空が小枝を滝に向かって投げた。


「……仲間…?」


「うん。この村の住人は皆仲間だよ。みーんな味方」


…どっちの意味なんだろう。


蒼空も心に傷を負っていて、同士としての“仲間”なのか。


単に元気づけようとしてくれた、味方としての“仲間”なのか。


蒼空は不思議な人だ。


私の心は見透かしているようなのに、その逆は絶対にさせない。


仲良くしてくれているようにみえて、完全に他人をブロックしている。


他人には踏み込ませない“絶対領域”があって、ニコニコしながら淡々とその領域を守っている。


少なくとも私にはそう見えた。


「…お互いに傷が癒せたらいいね」


蒼空に傷があるのかは分からないけど、きっと……。


驚いたようにこっちを見てくる蒼空。


「……ツライのは私だけじゃないんだね」


「……そーかもな。だから、ツラいことはお互いに助け合えたらいいな」


「…うん」


不思議な人。


蒼空と話していると心が安らぐ。


蒼空に出会えただけで、この町に逃げてきた意味があったような気がするんだ。
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