ムラマサ! ~道端でちょっとめんどくさいイケメンを拾いました~
「だが、お前と暮らすなら、住んでみてもいいかと思って、用意させた」

 私と二人になっても、この広さ、いらないと思いますね。

「でもあのー、こんなにメイドさんがいらしたら。
 私もなにも困らなくて、ムラマサに必要なものがわからないのでは?」

「それもそうだな。
 じゃあ、みんな帰ってもらうか?」

 その言葉に、えっ? クビですか? といった感じに、ユキコ以外のメイドたちが震え上がる。

「えっ、いや、そういうわけではっ」

 そもそも、居候の私の一存でそんなこと決めるのおかしいし。

 って、もともと、村正さんがうちの居候だったはずなのに。

 いつの間にか、私の方が居候の立場になってるの、変じゃないですか?

 ……そうだ。
 なんで私は流されて、こんなところにいるんだろう。

 帰ろう。

 帰りたい。

 帰らねばっ。

 あやめは、ぎゅっとキャリーケースの取っ手を握りしめる。
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