ムラマサ! ~道端でちょっとめんどくさいイケメンを拾いました~
 たぶん、あなたのお母様が思ってらっしゃる、奥さんと暮らせるような大きな家でない家には、我々庶民は、家族で充分暮らせると思いますね。

 そんなことを考えているあやめに、村正は言う。

「俺としては、ユキコさんがお前に言った、
 『味噌樽をお部屋にお置きになったら』のくだりの方が不思議なんだが……」

 いや、大事なんで、味噌樽。

 村正は枯れ木を、自分は味噌樽を小脇に抱え、この豪邸にやってきたのだ。

 万葉の間の大きな窓からは、虫の声も涼しげな、森のようなものが見えている。

 ……ここは街中だったはずだが。

 もはや、突っ込むまい。
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