ムラマサ! ~道端でちょっとめんどくさいイケメンを拾いました~
 


 マンションの中まで入ってきた自称AI音声認識サービスの人は、呆然としたように、月明かりに照らし出された室内を眺めていた。

「なんで家の中、なにもないんだ?」

 荒涼としてるぞ……と言われる。

「ピカピカにするのが好きなんです」
とあやめは言った。

「ガランとしてる方が掃除しやすいので。

 前は古民家に住んでたんですよ。

 ピカピカにしてたら、いいですねって言われて売ったんです。

 カフェになったみたいですよ、そこ。

 それで、この中古マンション買ってきたんです。
 
 でも、ここ、結構新しいんですよ。
 最初に買った方が、すぐに離婚して出られたみたいで」

「縁起悪くないか……?」

「カップルで住むのなら、悪いかもですね。

 っていうか、縁起とか気にされるんですね、AIなのに」
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