希望の光~たとえあなたが消えても愛し続ける~
2人だけの思い出
「美味しいかわからないけど、はい、どうぞ」


京夏さんが座っていた場所に、できたてのオムライスを置いた。
卵もふわふわ、ケチャップもお手製だ。


美味しいオムライスが作りたくて、本を買って勉強した。試行錯誤しながら料理をしていたら、思ってた以上に楽しくなった。


「じゃあ、俺、先に食べるよ。いただきます」


スプーンですくって、1口食べる。


「うん、美味しい。結構いける。京夏さんもそう思わない?」


静かな部屋、スプーンがお皿に当たる音が聞こえる。


「おかしいな……やっぱ、敵わないな……京夏さんのオムライスには……どうやったって敵わないよ……」


口に運ぶ度、涙がこぼれる。
たった数週間の2人だけの思い出が、嘘みたいな速さで頭を巡る。


京夏さんの笑顔、優しい声が、確かにここにあったんだ。


どうして……
どうして……


俺、何もしてやれなかった。
どうしてやれば良かったんだ?
どうすれば京夏さんを守れた?


本当に……
情けない、ごめん……


「京夏さん、会いたいよ」


あなたに、もう一度会いたい。
会って、側にいて、その肌に触れたい。


俺はね、自分のキラキラした未来より、あなたと2人でいる優しい未来が欲しかったんだ。


ただ……
一緒にいられるだけで良かったのに。


いい加減、受け止めないといけない。
京夏さんは罪を償うために頑張ってるんだ。
わかってる、わかってるから。
俺も未来に向かって、進むしかない。
希望の光は……まだちゃんとここにあるんだから。
< 21 / 22 >

この作品をシェア

pagetop