俺に夢中になれよ～純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない

俺はお母さんとの電話を切り、慌てて石川に連絡した。
「石川、あの手紙の主は分かったか？」
「いや、既婚者の男性社員は、皆、否定している」
「そうか･･･あと考えられる事としたら･･･独身だけど、既婚者だと言ったってことは考えられないか？」
「それって、有りだな。当たって見るよ」
「あぁ、頼むぞ」

電話を切って、昨日の朝の花純を思い出す。
花純･･･俺をどんな気持ちで見送ったんだろう･･･
あの時の言葉と顔を思い出すと、胸が締め付けられる。
早く誤解を解かないとな･･･

明くる日、朝から独身の男性社員に聞き取りしていた石川から連絡があり、副社長室で待っていた。

「分かったよ、晴海」
「本当か!？」
「俺が、会議室で１人１人聞いてるから、皆不審がってさ。男性社員の中で話が回って、１人名乗り出て来たよ」
「そうか･･･それで、実際にはどうなんだ？」
「それがさ･･･実は、小説を印刷したらしいんだ」
「小説？」

Web小説を書いている男性社員が、仕事中にふと思い浮かんだ情景をメモに入力していた時、会議資料の印刷を頼まれて、何かの拍子に、そのメモを印刷したかもしれないと告白したそうだ。

「全く人騒がせな･･･」
「どうする？今、ここに呼ぶか？」
「いいよ。俺が出たら大ごとになる。まぁ、今後気を付けるように、石川から言っといてくれ」
「あぁ、分かった。すまなかったな。青野さん、大丈夫か？」

花純のお母さんから、今日の昼から荷物を取りに、花純がマンションに戻ると、メッセージが入った。
「俺達の事は、昼から片付けに帰るよ」

花純を早く抱きしめたい。
仕事もそこそこに、急いでマンションに戻った。