俺に夢中になれよ~純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない
ドキドキしながらホッチキス留めが終わり、
「お、終わりました」
副社長を見上げると目が合い、顔が火照ってきた。
ち、近い・・・
そして、真剣な眼差しに見つめられると、思わず目を逸らして前を向いた。

しばらくそのまま何も言わず立っていた副社長の手が、書類を持つ、私の手に伸びてくる。
えっ・・・な、何?
体が硬直して動けない。

すると、その手は私が持つ直ぐ横を持って、
「ありがとう。助かったよ」
耳元で囁いた後、資料を取って、そのまま席に戻った。

触れられるかと思った・・・
そして私は・・・触れられる事に、凄く期待していた。
ドキドキが・・・止まらない。

仕事に集中しないと・・・
そう思っていても、最近、私を気に掛けてくれる、大人の男性の包容力に、日々副社長への気持ちは募る。

会議資料を纏めた副社長が、会議室に向かう準備をしていた。
「青野さん、この資料とファイル、会議室まで一緒に運んでくれる?」
「はい。他は大丈夫ですか?」
「それだけでいいよ」

私がファイルを全部持とうとすると、
「俺も持つから」
そう言って、ファイルを持ってくれた。
私はたったの2つだけ・・・
副社長はパソコンも持っているのに・・・
「あの、まだ持てますけど・・・」
「足元が見えなくなると危ないだろ?それだけで十分だ」
私を心配してくれる副社長の優しさが、嬉しい。
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