俺に夢中になれよ~純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない
一緒に運んで、会議室に向かってる時、後ろから声を掛けられた。
「青野さん、会議室までファイル持とうか?」
振り向くと富山君が立っていた。
「いいよ、私の仕事だから。それにこれだけだし」
「遠慮しないでよ。俺達そんな仲じゃ無いだろ?」
「うん・・・でも」

その時、前を歩いていた副社長が振り向いた。
「悪いが、極秘資料だから。青野さん、行くよ」
冷ややかな目と、淡々とした言葉。

「はいっ。富山君、ありがとう」
「うん、また金曜日ね」
そう言って、私の肩をポンッと叩いて、副社長に頭を軽く下げて部署に戻って行った。

会議室に入り、持っていたファイルを置いて、副社長に声を掛けた。
「副社長、後はどうしましょう」
「後は俺がするから、もういいよ」
私の目を見ず、ファイルを席に置いている。
「あの、手伝います」
「いいから。もう戻りなさい」

敬語・・・どうしたんだろう。
たった一言が距離を感じる。
ついさっきまでと違う、口調と態度に戸惑う。

さっきの富山君とのやりとり。それくらいも分からないのかと思ったかな・・・
はっきり断らなかったし・・・

「では、部屋に戻ります」
私は軽く一礼して、副社長室に戻った。
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