俺に夢中になれよ~純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない
【例え叶わぬ恋でも、あなたを想う】
翌週の月曜日、出勤した時に富山君と会ったら、どんな顔をしたらいいかと不安だったけど、顔を合わすことが無く、副社長室に入った。

「おはようございます・・・」
「おはよう、青野さん。・・・何かあった?元気無いね」
「い、いえ、何もありません」

引きつる顔で挨拶してるのが分かる。
副社長の顔を見ると、ふと、富山君にキスされたシーンが頭に浮かんだ。
そして、会議室の会話も・・・

「困った事があれば、いつでも相談して」
「は、はい、ありがとうございます」
言えるはずが無い・・・こんなこと・・・

午前中は、入力作業と、会議資料の準備をするのに集中して、あっという間に過ぎた。

午後になると、管理部長が副社長室を訪れた。
「副社長、海外営業部長から、富山君の退職届を預かりました」

私がびっくりして、管理部長を見ると、私の方に顔を向けた。
「青野さん、何か聞いてる?」
「い、いえ、何も」
「そうですか・・・」

管理部長は副社長を見据えて、硬直していた。
「申し訳ありません。彼は、入社早々から先輩職員達の間では評判が悪くて、私は色々聞いていたのですが・・・しばらく様子を見ようと、指導を怠ってました」

管理部長が話しているのを聞くと、私の知らない富山君がいた。
私に言うのはただの愚痴かと思っていたけど、そうじゃなかった。

入社してから、何かと言えば『前の会社では・・・』と言い、晴海のやり方はおかしいと、指摘したと思えば、先輩達を見下した話し方をして、何度も海外営業部長に注意されていたらしい。
< 19 / 109 >

この作品をシェア

pagetop