俺に夢中になれよ~純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない
「早速、今日の昼から帰りまして・・・」
管理部長がため息をついていた。

「面接には、それほど責任が生じるということだ。担当部長が最終判断して、採用したんだ。彼の仕事のしわ寄せは、俺から、部長に責任を取らせるよ」

管理部長に言い放つ厳しい言葉と、鋭い目つき。

「海外営業部は、最近、人の定着も部の纏まりも悪い気がするが・・・大きな案件を抱えているし、これから重要になる部署だ。部長交代を早めるか。社長に報告しておくよ」
「宜しくお願いします。私も一層、気を引き締めます」
「管理職として、判断が出来ないのであれば、直ぐに私に報告するように。手遅れになってからじゃ遅い」
「早速、部長会議でも周知致します」

これが・・・本来の副社長の姿。
でも怖い・・・とは思わなかった。
思わず、ゾクッとするほど、カッコいいと思ってしまった。

「では、失礼します」
緊張して強ばったまま、管理部長は部屋を出て行った。

「青野さん、嫌な事聞かせて、悪かったね」
「いえ、秘書ですから」
話を聞いても、同期を悪く言って、という気持ちが湧かなかった。

「毎週金曜日の楽しみも無くなるね」
副社長に言われて、金曜日のことを思いだして戸惑う。
先輩に叱られたって言ってたけど、きっと富山君に問題があったと思う。
それに・・・

本命の彼女がいたのに・・・私にキスをした。
もしかして、私以外にも、同じようなことしてるのかも・・・
同期ってことより、他の事が目的だったのかな・・・
私に見せていた笑顔が、作られたものだったと思うと、寂しい気持ちになった。

「大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫です」
「今週の金曜日、青野さんの歓迎会しようか。木下さんと一緒にしたかったけど、出来なかったからね」

突然の副社長の誘いに、頭が真っ白になって、呆然としていると、
「俺と2人だと、嫌かな?」
副社長が不安そうに私を見ていた。

「い、いえっ、お願いします」
「良かった・・・丁度、外出する予定だったから、その帰りに行こう」

富山君のことは、油断した私も悪いんだ。
そう言い聞かせた。

今度の金曜日は、副社長と・・・
それを楽しみに、今週は乗り切ろう。
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