俺に夢中になれよ~純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない
毎日、2人で過ごす時間。
青野さんの存在は、俺には無くてはならない存在になっていく。

上司としての気持ちで抑えていても、一瞬でも青野さんへの想いが、表に出ると・・・
愛おしさが溢れ出し、戸惑う顔や声が聞きたくなる。
俺に・・・少しでも振り向いてくれたら・・・

俺は、いつまで副社長として、平常心を保てるのだろうか・・・

月末を迎え、直帰予定だった、得意先との打ち合わせが早く終わった。

まだ間に合うな。会社に戻ろう。
少しでも青野さんの顔を見たい。

外出先から車で急いで戻り、ビルに入るとエントランスで、富山君と会った。
「今日で退職か」
「はい、お世話になりました」

色々話は聞いていたが、最後の日だ。気持ち良く送りだそう。
「青野さんの唯一の同期が退職だと、寂しがるな」
「青野さんですか・・・俺と一緒にいても、いつも副社長の事ばかり話をして、妬けましたよ」

俺の事ばかり?青野さんが?
「でも、俺はそれ以上の事してるから、いいんですけどね。短い期間でしたが、ほんと、純情な彼女の乱れる姿、何度見ても最高でしたよ。同期でラッキーでした」

噂は、本当だったのか・・・それにしても・・・
「お前・・・人のこと、侮辱するのもいい加減にしろよ!」
「俺は辞めていきますから、もう部下じゃありませんし。まぁ、彼女がまた俺を欲しくなれば、付き合うだけです。では、お世話になりました」
薄笑いして頭を軽く下げて、帰って行く富山の背中を見て、怒りと嫉妬が沸き起こる。

あの生意気な口で、あの手で、あの体で、青野さんに触れたのか。
今の俺、きっと凄い形相だな。

年上の俺より、同期同士の方が、気が合うだろうと、誤魔化して抑えてきた気持ち。

一番傍にいるのに、副社長としての立場で、彼女に一線を引くジレンマ。

それが一気に音を出して崩れだし、青野さんへの愛情が溢れ出す。

初めて会ったあの日・・・胸がざわめいたあの瞬間・・・
きっと、運命の出逢いだった。
俺は、足早に副社長室に戻って行った。
< 29 / 109 >

この作品をシェア

pagetop