俺に夢中になれよ~純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない
帰り・・・遅くなるんだ。
言えなかった・・・
私以外の人を抱かないで下さいって・・・

しばらく呆然と、ソファに座っていると、自然に涙が溢れていた。
子供っぽくて、男性と付き合った経験が無い私じゃ、物足りないのかも・・・

いつも自分が柊弥さんに愛されている風景が、皐さんに変わって想像してしまう。
嫌だ・・・柊弥さん・・・

その時、ドアが開き、柊弥さんが戻って来た。
「わ、忘れ物ですか?」
慌てて背中を見せて、涙を拭いた。

「俺の居ないところで泣くなよ」
後ろからそっと抱きしめられて、振り向かされた。
「俺が気付かないと思うのか?」

柊弥さんは、晴海商事を動かす人なんだから。
私の嫉妬で時間を無駄にさせては・・・ダメだ。

「何もありまっんんっ・・・」
柊弥さんはキスをして言葉を止めた後、真剣な眼差しで私を見据えた。
「本当のこと言うまで、キスは止めない」

出発時間が過ぎてるのに・・・キスが止まらない。
本当はこのままずっといたいけど・・・柊弥さんの胸を押して唇を離した。

「・・・早く・・・行かないと」
「じゃあ、その涙は何だ?」
「それは・・・」
柊弥さんの怒りを含む目に捉えられ、言葉を呑み、口をつぐむ。

「そうか、分かったよ」
そう言って、携帯を取り出し、何処に掛けた。

「あぁ、皐さん。急で申し訳ないんだけど、どうしても外せない用が出来て・・・週明けに、そっちの会社に行くから、キャンセルさせて欲しいんだ・・・・・・じゃあ、月曜日、10時に」
それだけ伝えると電話を切って、私を見た。

「これでいいか?」
「どうして・・・」
「嫌なんだろ?俺が外で皐さんと会うの。それと、これ、見たんだな?」

デスクに向かい、引き出しから、今朝、上着に入っていた避妊具の箱を見せた。
もう、隠せない・・・
小さく頷き、思いを伝えた。

「皐さんと、もしものために・・・かと・・・」
「どうして俺が皐さんと?言っただろ?俺は花純に夢中だって。花純以外を抱くわけがない」
「だって・・・」
「あまりに好き過ぎてさ。我慢出来なくなったら、いつ花純を抱いてもいいように、準備しようと思ってただけだ」
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