ごめん、キミが好き《短編・完結》
「あれ…っ、ユイ?なんで…」
タクマの声がすごく焦っている様に聞こえて、私はすぐに涙を拭いた。
「タクマの夢を見たの。目が覚めたら…タクマが近くにいる気がして…。」
タクマは少し悲しそうに、優しく微笑んだ。
「気付いてくれたんだ…。」
「タクマ、お願い…。聞いて欲しいの。」
夜中だっていう事に気付いて、声を落ち着かせた。
優しいタクマは、私を引き剥がす事もしないで、ただそっと私の頬に手を添えた。
「うん。聞くよ…。」
「ごめん…ね、タクマにはもう婚約者がいるって知ってるよ。」
「ユ…ッ」
「それでもっ、タクマの事…この4年間忘れられなかった…。」
タクマに、突き放される前にとにかく気持ちを伝えるのに必死だった。
タクマが何か言おうとしても、もう二度と伝えられなくなるくらいなら、何も言わせる隙を作らないように。
「私…私ね、タクマを弟だなんて思った事一度もなかったよ。ずっと…タクマを…。」
言葉に詰まった訳じゃない。言い直したかった。
「私、タクマが好き。タクマの事愛してる。」
「ユ…イ。」
タクマが目を丸くして驚いてる。
「それだけ言いたくて…。あのっ…でも、タクマには幸せになって欲しいから…その。………タクマ?……きゃ…!」
タクマは私を抱き締めたまま、地面に座り込んでしまった。
「え…?ちょ…タクマ。」
訳も分からず私は黙っているタクマのつむじを見つめる。
「嘘…だろ?…夢みたいだ。」