ごめん、キミが好き《短編・完結》



「待ってユイ…、え〜っと、少し落ち着かせて。」


しゃがみ込んだまま、タクマは両手で顔を覆った。



しばらくして指の隙間から、タクマの視線が私に向けられた。



「…ユイ…レストランで会った男は?」




タクマが声を押さえて、不意に質問してくる。



「あ…あの後、別れたよ…。すごく傷つけちゃったの…。」





「そう。」



今度は何か考えたように、両手を顎の下で組んだ。



ドッキリとかやめてね、と困ったように笑うタクマが、次に何を言うのか私は黙って待った。


「じゃあ、俺からも報告。婚約者なんて始めからいないんだ。出発する日に父さんに断りを入れたよ。彼女は俺のただの秘書。」



「え…嘘。そうなの…?」



まさか、そんな事になってるなんて思わなかった。



「う〜ん。正しく言うと…つい最近、やっと正式に婚約を解消してもらったんだ。」



「……どういう事?」





「ま、とりあえずさ、その話は後で。」



タクマが立ち上がって、私を引っ張り寄せた。




「タクマ…何?」


「ん〜…?」



タクマは私をじっと見つめると、あの天使の様な笑顔を久しぶりに見せてくれた。





「ユイは、やっと俺のモノになったね。もう一生俺のモノ。」




「な…?え?どうゆう意味…?」




タクマが大きく息を吸った。



「…結婚しよう、ユイ。今すぐにでも。」






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