ごめん、キミが好き《短編・完結》
いきなり、プロポーズされた。
「…タ…っ」
「ま、返事はハイしか聞かないケドね。」
タクマが、あの八重歯を見せて…今度は悪魔の笑顔を私に向けた。
そうだった…。
私はタクマの虜だった…。
そんな事言われたら、ハイって言うしかないじゃない。
タクマを家に入れてとりあえず落ち着いた私は、ただソファーに座るタクマの手を握っていた。
ママ達は寝てるから静かにね?と言うとタクマは黙ってはにかんだ。
「ユイ、どうして今まで何も言ってくれなかったの?」
切なそうにタクマが聞くから、私は正直に話そうと思った。
「ママとの約束だったの。タクマとは将来さよならしなきゃいけないから、好きにはならないって。でも、そんなの人に言われてどうにかなる訳なかったのにね…。」
そう言って軽く笑って見せると、タクマが私を抱き寄せた。
「はぁ…。本当に…嬉しすぎ。」
ギュウッ―と、タクマに抱き締められる。それだけでもう…4年間の空白が嘘みたい。
忘れられなかったタクマの温もりを現実に感じる事が出来て幸せ。
でも――
これだけは、タクマに言わなくちゃ。
「タクマ…ごめん。」