ごめん、キミが好き《短編・完結》
タクマのお父さんは、海外の大手広告代理店の社長。
タクマはその跡取り息子。
タクマのお母さんは、タクマを産んですぐに亡くなってる。
聡おじさんの代で傾いてしまった会社を、なんとか建て直すために、聡おじさんは幼いタクマを手放した。
そして、大学の後輩だった私のパパの所、つまりウチでタクマを預かる事になった。
住む世界は最初から違うって分かってたよ。
でも、それでももう少しってタクマの側にいた私は…
もう少しだけ、なんて…甘い夢を見てた。
聡おじさんのタクマへの愛情は本物。
きっとタクマもお父さんと一緒に暮らす方が幸せだよね。
そろそろ…見納め時ってヤツなのかな。
『ユイちゃんには申し訳ないと思っているよ。恨んでもらって構わない。私には、タクマの支えが必要なんだ。』
「分かりますよ聡おじさん。タクマはとっても素敵な男性に育ってます。それに、タクマは私を姉の様に慕ってるだけです。大丈夫。タクマは聡おじさんに着いて行くはずです。」
『そうか。じゃあ、あの話も上手く行きそうだ。』
「あの話…?」
『タクマには、絶対内緒だよ?……………実は………………。』
「……そうなんですか。きっとタクマも喜びます。私、もう出かけなきゃ。聡おじさん、お仕事頑張ってくださいね。」
そう言って私は、そっと受話器を置いた。
私とタクマの未来は、
きっと来ない。