ごめん、キミが好き《短編・完結》
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「「タクマ君、卒業おめでとう!」」
私が仕事から帰ると、卒業式を終えたタクマが、お父さんと一緒に家に帰って来ていた。
『今日はお祝いだから、ユイは仕事終わったらすぐ帰ってくるのよ?』
朝、ママに言われた通り残業もしないで定時で帰ってきた私。
張り切って豪華な夕食を作って並べるママの姿が想像出来た。
「おかえり、ユイちゃん。久しぶりだね。」
タクマのお父さんがリビングのドアの前に立っている私に気が付いた。
精一杯、笑顔を作りながら私は部屋に入って行った。
「ただいま。おじさんもお帰りなさい。元気そうで良かったです。」
「何つっ立ってるんだぁ?早く座りなさ〜い。」
お酒も入って上機嫌のパパが私を手招きする。
お祝い事には必ずワインを飲むパパとママ。
めでたくなんかないよ。
テーブルに座ると、初めてタクマの顔が見えた。
昔から自然と、タクマと私の席は、正面に決まってたから。
合わせる顔がないのに、普通にしなくちゃいけない。
一緒に暮らしてる事を、初めて嫌だと思った。
でももう今日で終わりか。
「タクマ、卒業おめでとう。」
ニッコリとタクマと視線を合わせる。
「ありがとう。」
ニッコリ私に微笑みかけるタクマには、喜びみたいな感情は見られなかった。