ごめん、キミが好き《短編・完結》
「アキラ、ユウちゃん、タクマを本当に…こんなに立派に育ててもらって……感謝してもしきれないよ。本当にありがとう。」
食事も終わって、タクマのお父さんが席を立ったと思ったら、深々と頭を下げた。
声が少し震えてる。
「ユイちゃんも、ありがとう…。みんな、今までタクマを大切にしてくれて…本当にありがとう。」
パパとママも涙ぐんでた。
「聡さん…とんでもないです。僕たちも、タクマ君の成長する姿が楽しみでしかたなかった。タクマ君との時間はとても幸せでしたよ…。」
私もだんだん涙が浮かびそうになって、何度も息を飲み込んだ。
タクマ一人が、感動のシーンに浸れていなかった。
むしろ一人だけ、みんなの空気を理解出来ていなかった。
「タクマ、今までほったらかしですまなかった…。寂しさなんてひとつも見せずにワガママも言わずに、たくましく成長してくれて…。」
ずっと黙っていたタクマが、やっと口を開いた。
「何?みんなしてしんみり。まるで…もう会えなくなるみたいに…。父さん…どういう事?」