ごめん、キミが好き《短編・完結》
カオリの希望で、俺のアルバイト先に行く事になった。
駅前にあるカフェだ。ユイも何度か来た事がある。
「こんにちは。」
「いらっしゃい…おぉ、タクマか。」
店長の守さんが顔を出した。
「わっ…イケメン!」
カオリが俺の後ろから身を乗り出した。食い付くのも無理ない。店長は大きくて少しタレた目を細めてキラースマイルを見せた。
「何頼む?」
カオリは適当にケーキと紅茶を頼んで、俺はコーヒーのブラックにした。
コーヒーをすする俺を、カオリが頬杖をついて凝視する。さすがに照れて俺が口を開いた。
「俺の顔、何か付いてる?」
「え?!…ううん。ただ…タクマはコーヒーのブラックなイメージだなって。ぴったり。」
カオリはくしゃっと笑ってみせた。
意味が分からないなぁ。
俺が首をかしげると、慌ててカオリが付け加えた。
「ほら、余計なものは加えないで、苦い感じ。タクマって他人が深入りしたら苦い思いさせるの。余計な事はしないで、ただ一つのモノだけを欲しがってるイメージだよ。」
「…」
俺はコーヒーをまじまじと見つめた。
「ね?」
何が『ね?』なのかは分からないけど、少し納得。
他の女なんていらない。ユイだけが欲しい。
俺が昔からコーヒーをブラックで飲むのは、ただ大人になりたい願望で無理して飲み始めただけなんだけど。