ごめん、キミが好き《短編・完結》
タケルと二人でかなりの量を飲んだその帰り、ふらつきながらもなんとか家にたどり着いた。
おじさんも、おばさんも寝てるな…。
静かに、静かに。
ユイは…?
ユイに会いたい。
この時、俺はユイにいくつかの嘘をついてしまった。
ひとつめの嘘。
携帯にあるリダイアルでユイを選ぶ。
プルルルル―……プルルルル―…
寝てるかな?
「はい。」
出た。ユイの声。
「ユイ、鍵開けて?」
本当は、鍵なんて忘れてないんだ。だってあれには、ユイとお揃いのストラップがついてる。
歩くのもままならない俺を、ユイが部屋へ連れてってくれた。
「お水持ってくるね。」
なんて優しいユイにもうひとつ嘘をつく。
゙彼女が出来だ
なんて嘘だよユイ。ユイに言って欲しかった。
゙ずっとあたしの事好きでいで
゙他の女なんか見ないで゙
…って。
でもユイは、思い通りにならない。
俺の顔を見ないユイを、無理矢理自分の方に向かせる。
ユイは俺が守る。
だから俺を見て。
そんな俺の願いは、ユイによって打ち砕かれた。
もう…いやだ。
ユイをこんなツライ顔をさせるために思い続けてきた訳じゃない。
俺は最後の嘘をつく。
「それならいっそ、俺の事は嫌いだってフッてくれよ!ユイの曖昧な態度に、俺は縛り付けられてる!」
はっきりフラなくていい。
曖昧でいいんだ。
俺が勝手にユイの虜になっただけ。
だから、黙って部屋を出て欲しい。
本当はユイの口から『キライ』だなんて聞きたくないよ。