ごめん、キミが好き《短編・完結》


タケルと二人でかなりの量を飲んだその帰り、ふらつきながらもなんとか家にたどり着いた。



おじさんも、おばさんも寝てるな…。

静かに、静かに。



ユイは…?

ユイに会いたい。





この時、俺はユイにいくつかの嘘をついてしまった。


ひとつめの嘘。



携帯にあるリダイアルでユイを選ぶ。


プルルルル―……プルルルル―…


寝てるかな?


「はい。」


出た。ユイの声。



「ユイ、鍵開けて?」



本当は、鍵なんて忘れてないんだ。だってあれには、ユイとお揃いのストラップがついてる。




歩くのもままならない俺を、ユイが部屋へ連れてってくれた。




「お水持ってくるね。」

なんて優しいユイにもうひとつ嘘をつく。




゙彼女が出来だ



なんて嘘だよユイ。ユイに言って欲しかった。




゙ずっとあたしの事好きでいで


゙他の女なんか見ないで゙



…って。






でもユイは、思い通りにならない。



俺の顔を見ないユイを、無理矢理自分の方に向かせる。



ユイは俺が守る。


だから俺を見て。



そんな俺の願いは、ユイによって打ち砕かれた。



もう…いやだ。



ユイをこんなツライ顔をさせるために思い続けてきた訳じゃない。



俺は最後の嘘をつく。




「それならいっそ、俺の事は嫌いだってフッてくれよ!ユイの曖昧な態度に、俺は縛り付けられてる!」




はっきりフラなくていい。

曖昧でいいんだ。



俺が勝手にユイの虜になっただけ。




だから、黙って部屋を出て欲しい。



本当はユイの口から『キライ』だなんて聞きたくないよ。





< 77 / 115 >

この作品をシェア

pagetop