ごめん、キミが好き《短編・完結》
ユイの意志も固いんだと思った。
正直、父さんの事も心配だった。
会社を立て直すために必死に一人働いてたんだ。
決断の時。
こんな時でも優柔不断に迷う俺は、息が詰まりそうで何度も深呼吸をする。
瞳をゆっくり閉じると、幼い頃からのユイとの思い出が蘇る。
そして少しの沈黙の後。
「俺、行くよ。父さんと一緒に。」
ユイに背中を押されながら、俺は心を決めた。
二人で家に帰ると、おじさんとおばさん、そして父さんが、心配そうに俺を見つめた。
「父さん、話があるんだ。」
そう言って父さんを俺の部屋に連れて行った。
「俺みたいなガキが、どこまで出来るかわからないけど、父さんの力になりたいと思う。」
「タクマ…本当か?着いてきてくれるのか?」
俺は黙ってうなずいた。
「私なんかが聞ける立場じゃないんだか、…ユイちゃんの事は…。」
父さんからの意外な質問に、一瞬驚いたけど…俺は正直に話した。
「ユイにはとっくにフラれてる。」
少し笑ってみせた。
「そうか…。あっちでタクマに紹介したい人がいてな、すごく素敵な女性だ。どうだ?」
紹介したい人…って俺にですか…。
「父さん、悪いけどその話しは受けられない。俺はユイを想い続けたい。そう決心してる。」
そして一間おいて続けた。
「もし、ユイ以上の人が現れたらその時は、その人を一生守るよ俺は。」
さっきよりももっと笑って見せると、父さんは優しい目を俺に向けてくれた。
「いい男になったな、タクマ。」