ごめん、キミが好き《短編・完結》
駅のホームで、タクマが急に立ち止まった。
「今日も遅いの?」
少しかがんで、私の顔を覗き込む…
ついこの間まではかがむのは私の方だったのに。
「…うん。たぶん。」
曖昧に答えるのは、嘘を見抜かれるのが怖いから。
予定なんていつも最初からないよ。
毎日無理矢理予定を作ってるの。
「終電だったら迎えに来る。」
そう言いながら、あたしの髪に触れて真っ直ぐに私を見るから、やっぱり嘘が通じない気がして怖かった。
「いいよ。会社の人に家まで送ってもらうよ。」
タクマから目を逸らして答える。
すっと私から離れて、諦めたように『行ってらっしゃい』と言う逆の方向のタクマに見送られて、私は電車に乗った。
「…はぁ…。」
ここ最近、ろくに寝てない。ため息ばかり出ちゃう。
今日は誰を連れ出そう…。
今年に入ってから、私はなんとかタクマを避けて暮らしてた。
これ以上、タクマと一緒にはいられない。