ごめん、キミが好き《短編・完結》
土曜日。
仕事は休みだけど、今日は豊さんと食事に出かける日。
待ち合わせより少し早いけど家を出ようとしたら…
家の電話が鳴った―。
「はい。山城です。」
「ユイ?」
電話でも分かる優しく響く声。
「え……―。」
「ただいま。」
少し低くなった気がする。
タクマが、帰ってきた。
「お…かえりなさい。」
戸惑っている私に、タクマは優しく話しかける。
「良かった。携帯通じないからとりあえずこっちにかけたんだ。元気?」
「うん。元気だよ。タクマは?」
「元気。今日家に挨拶行こうと思ってるんだけど、3人とも家にいるかな?」
「パパ達はいるよ。私は予定あって…。」
すれ違いなのが、残念なのか良かったのか自分でも分からない。
「そっか。残念。」
「ごめんね。」
「まだしばらく日本にいるから、また連絡するよ。携帯教えて?」
素直に番号を教えると、タクマは誰かに呼ばれて電話を切ってしまった。
耳が、熱い。