ごめん、キミが好き《短編・完結》
普通の高校の制服ですら完全に着こなしていたタクマ。
グレイのタイトなスーツをシンプルにただ着ているだけなのに、すごくお洒落に見えるのは何故なんだろう。
サラサラだった黒髪は、綺麗に整えてあって少し窮屈にさえ見えた。
タクマ…すごく大人っぽくなった。
どうしよう。タクマから視線を反らせない。
居心地が悪い。
向こうの席にはタクマの婚約者。
目の前には、豊さんがいる。
「久しぶりだね、タクマ。元気そうで良かった。」
私はにっこりと微笑んで、平静を装う。
「ユイ…こちらは?」
タクマが豊さんを見た。
豊さんは席を立って手を伸ばす。
「どうも。君がタクマ君?ユイちゃんから話には聞いてましたよ。」
私も慌てて席を立ってタクマに話しかけた。
「こちら、杉山豊さん。…え…と。今お付き合いしてるの。」
タクマから視線を外しては、すぐに瞳がタクマを求める。
豊さんにもきっと気付かれてる…。
「そうですか。はじめまして。」
笑顔で豊さんの手を握るタクマを見てほっとした。
と、同時に…胸が苦しくなった。