ごめん、キミが好き《短編・完結》
婚約者の女性が不安気にこっちを見てる。
『じゃあ、ユイまた。』
そう言ってタクマは、席に戻って行った。
婚約者のもとへ…。
本当は、タクマに抱き締められたかった。
このままレストランの外へ、私を連れ出して欲しかった。
会いたかった。
でも、そんな事起こるはずない。
そんな事を考えちゃだめ。
だからその代わりに、今すぐここから去りたかった…。
「ユイちゃん、そろそろ行こうか。」
豊さんに話しかけられるまで、私は無心で食事をしていた。
最低…。
「ごめんなさい!私…。」
豊さんは悲しそうに微笑むと、そっと私を出口に連れて行った。
タクマの方を振り替える事もなく、私は豊さんに従った。
「苦しそうな君を見ていたくないんだ。」
何も言えずに連れてこられたのが、レストランの上にあるホテルの一室だった。
「あの…豊さん…?」
「今日は、朝まで一緒に居てくれないかな?」