極上御曹司の純愛〜幼なじみに再会したら囲い込まれました〜
個室に入ると畳の上にテーブルとソファが二脚置かれ、壁には提灯に似せたデザインのとても素敵な照明が掛かっている。

朝日くんに促されるままヒールを脱いで中に入ると、窓の外には遠くまで見渡せるほどの夜景が眼下に広がっていた。

「すごい! こんな素敵なところに来るの初めて」
「個室の方が美詞も気兼ねなくゆっくり出来るだろ?」

確かにそうかもしれない。
けれどゆっくりしに来たわけじゃない。今日は話し合いに来たのだ。

きっと他人がいる広いラウンジより、個室の方が金銭に関わる話が出来るからと用意してくれたのだろう。

朝日くんはウェイターにあれこれと注文をしてから軽く右手を上げ、よろしくと言い終えると私の方へ向き直った。

なんだか凄く慣れたやりとり。
メニューなど見なくても何があるかすべて覚えていそうで、それがさらに私の緊張感を高めた。

「ところで朝日くん、スーツのことなんだけど」
「あれは大丈夫だよ」
「でもやっぱり弁償させて欲しい」
「美詞が心配しなくてもいい。同じようなもの幾つも持ってるから、一着くらいどうってことないよ」
「そういうわけにはいかないよ」

何度言っても断られる。
< 10 / 64 >

この作品をシェア

pagetop