極上御曹司の純愛〜幼なじみに再会したら囲い込まれました〜
微かに苦笑いを浮かべた朝日くん。

夜逃げ同然で母の田舎に引っ越し、みんなに挨拶すらせず転校したため朝日くんにもお別れの言葉をかけられなかった。

「当時は、ごめんね」
「わかってるよ。家の事情だから仕方なかったよな。それより引っ越してからの美詞は元気だった?」
「……うん」

本当は突然環境が変わったことに馴染めず、転校してからしばらく不登校になった。

その後、家の事情を聞かされ親の方が悲痛な精神状態だと知り、私ばかりが悲しいわけじゃないんだと気づいてからは明るく振る舞うことを心がけるようになった。

そして何年も経って九十九学園のことはいい思い出となり、子供好きなこともあって保育士になると決め、大学を選ぶときに楽しかった幼少期の場所に戻って学ぼうと上京して、今に至る。

「でもまさかあんなところで美詞に会えるとは思わなかったよ。俺たち運命的だよな」
「はは……」

運命かどうかはわからないけど、偶然ぶつかった相手が幼馴染だったことに関しては助かったかもしれない。
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