マスカレードknight ~サンタ マリア~
「バーテンダー??」

「・・・・・・真下さんの警護も兼ねてだ」

目を丸くしたわたしを見下ろす亮ちゃんはバツが悪そう。

今日は来ないって決まってたのに?心配してくれた?変装して見守ってくれてた?すごく亮ちゃんらしい。

「そういう事にしておくか。どうして素直に言ってやらないかねぇお前は」

面白がった風で社長がゆっくり立ち上がったのが合図のように、散らばってた人達がわたしと亮ちゃんの近くに集まる。

「亮と明里の赤ん坊の未来に乾杯するとしよう。今日は無礼講だ、みんな好きに飲め」

短い挨拶で掲げられたそれぞれのグラス。

大勢にお祝いされたのは『津田さんとの結婚』だったから。大好きな人に授かった命なのを祝福してもらえるのが嬉しい。素直に笑みがほころぶ。

「亮、向こうの部屋を使え。野暮な真似はしないから安心しろ」

「ありがとうございます」

「後でゆっくり祝ってやるぞ明里。楽しみにな」

返事をする前に軽く引き寄せられると、社長のキスが額に落ちた。

津田さんといい、ハグとかあれこれ平気なのも、わたしを小動物扱いしてるからなんだろうなぁ・・・。

「・・・こっちだ明里」

お礼もそこそこに亮ちゃんに手を引かれ、バーカウンターの先を右手に折れればホテルライクな廊下が。扉が三つ、銀色のナンバープレートまで付いて、なんだか旅行にでも来た気分。
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