マスカレードknight ~サンタ マリア~
「お前が泣くとお腹の子も心配するぞ」

ほんとだ。しっかりしなくちゃ。手で涙を拭いおずおず顔を上げれば、亮ちゃんが子供をあやすように髪を撫でてくれる。

「・・・そうだな、名前も決めてやらないとな」

「うん・・・っ」

鼻をすすりながらフニャフニャ笑い。亮ちゃん似だったら男の子でもどっちでも、絶対かわいい。

「娘なら・・・マリエ、・・・マリアも悪くない」

亮ちゃんがふっと淡い笑みをにじませた。

聖夜。聖母。純潔。慈愛。その清らかな名前にどんな願いを込めたんだろう。

「まりあちゃん。すっごくいいと思う・・・!」

「明里ならどうだ」

「ええっとね・・・、『てまり』ちゃん?『いまり』ちゃん?」

『り』が入って三文字。自分とユカもそうだから、無意識に重ねて連想したのかもしれない。

「伊万里、か」

「え?あっ、でも、まりあちゃんの方が今風で素敵だし」

「・・・いや。響きも悪くない」

穏やかな眼差しで亮ちゃんは決めたように。

まだ分からないのにどうしてか、生まれてくるのが女の子にしか思えなかったのは。きっとマリア様がこっそり教えてくれたの。

いつか、そうお話してあげよう。わたし達の『伊万里ちゃん』に。
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