マスカレードknight ~サンタ マリア~
わたししか知らないあの澄んだ笑い顔は、今は箱につめて仕舞ってるだけ。命懸けの世界で闘うためにどんなに心を凍らせてても、消えてなくなったんじゃない。

だからこの子にも見せてあげてね?津田さんと社長にからかわれちゃうくらい、甘くふやけたお父さんの顔。

「そう言えば亮ちゃん、社長命令って」

「ああ・・・、花嫁を満足させるまで戻るなと言われた」

大好きでしょうがないひとに深く見つめられ、心臓がきゅっとなる。もっと奥に熱を生む。

(アシ)を持って行かれたからな、丸腰で明里を連れては動けない。ここでただ二人でいるだけだ。・・・どう喜ばせたらいいか、何をしてやればいいのか分からない。それでも俺とい」

「亮ちゃんといられるだけでいい・・・っ」

最後まで聞かないで抱き付く。背中に回した手に力を込めて。

「明里って呼んでくれるだけで、それより幸せなことなんてないもん!」

ただ二人で。なにもない時間を過ごせる贅沢。至福。一生こわせない鍵をかけて、亮ちゃんと閉じ込められたい。永遠に今日を繰り返せばいいのに。

「俺にしかできないこともある、・・・か」

優しく囲われた腕の中。吐息がわたしの髪に埋まった。

「愛している明里」

低く切なく耳に残る。

「・・・お前の気が済むまで言わせてくれ」




FIN


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