マスカレードknight ~サンタ マリア~
「ところで、なんで室長欠席?!イヤガラセ?!これね?室長に見せるためだけに買ったドレスね?うぅ」

亮ちゃんファンの彼女は今度は泣き真似。いそがしい。

「仕事、みたいです」

「外せない接待らしいな」

わたしの誤魔化し笑いを、本物っぽく津田さんがフォローしてくれた。

中途でグランド・グローバルに採用された時、亮ちゃんとお互いに思いもしない再会になって。でも家族や亮ちゃんの両親にも、会ったことは絶対に言わない約束をした。もちろん初野さんにも秘密のまま。

お父さんやナオ達を前に、室長として名乗れない亮ちゃんは来られないことになってる。ほんとはわたしが一番見せたかった、このウエディングドレス姿を。

肩を出さないAラインのシルエットで、レースをふんだんに使ったクラシカルで清楚な感じの素敵なドレス。転ぶと危ないからって、裾もローヒールが隠れるちょうどの長さ。

選んでくれたのは亮ちゃんだから。

「明里、そのドレスよく似合ってるぞ。世界一の花嫁だな、亮の見立ては悪くない」

初野さんと入れ替わりに、わざわざ挨拶に来てくれた真下(ましも)社長が、長身をかがめて耳許で妖しく囁いたのを。周りの人にどう映ったかと思わず挙動不審に。

「・・・俺の嫁を口説きに来たんだったら帰っていいですよ、真下さん」

「言うねぇ津田」
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