マスカレードknight ~サンタ マリア~
全てを知ってる真下社長が、不敵に笑ってからわたしに目を細めた。

会社でも他人がいない場所だと下の名前で呼ばれたり、食事に誘われたり。特別扱いには意味があって、亮ちゃんにまた逢えたのが始まりだった。

「つわりは平気か?披露宴(これ)が終わったら亮に会わせてやろう」

「!」

ついつい頬が緩んでしまう。尻尾が生えてたら、振り回しすぎて取れちゃったかも。

「・・・嬉しがるなよ」

頭の上で舌打ちが聞こえたような。振り仰ぐと一瞬、鞭を片手に待ち構えてる津田さんの幻が見えた。ような。

「じゃあまた後でな、明里。ああ、さっきお前の家族には挨拶しておいた。亮の分もな」

「ありがとうございます」

「当然だ」

オーダーメイドの三つ揃いを品良く着こなす独身社長は、まだ40歳に届いてないのに風格があって、女子社員の抱かれたい男ランキングトップ。本気で玉の輿を狙うひとが後を絶たないんだとか。

野性味のある甘いマスクは、間近にすると迫力が違って怖い。外側だけ見てるひとは気付かないのかな。真下征一郎(せいいちろう)というこの人は、本当はとても怖いひと。

優しくて厳しくて、・・・怖いひと。
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