マスカレードknight ~サンタ マリア~
「明里ちゃん、これも食べるー?」

ちょっと胃がもたれる感じはするけど、まだそんなにつわりっぽくもなく。看護師のユカが、わたしが食べられそうなお料理をバイキングコーナーから取り分けて持ってきてくれたり。

急だったのに出席してくれた親戚とも友人とも、肩の凝らない和やかなひとときを過ごせた。

後半で定番のビンゴゲーム大会が始まり、しかも賞品を提供してくれたスポンサーは真下社長だと、司会の女性が裏話を披露。

ゲームがあることさえ知らなかったわたしは、賞品の豪華さに呆気に取られるばかりで。

新郎新婦からの花束贈呈では、お父さんよりナオが号泣。ユカも笑い泣きで、あったかい拍手をもらいながら手塚家は、仲良く涙で締めくくった。

津田明里になったわたしを心から祝福してくれる家族に、大きな大きな嘘を吐きとおして、それでも笑顔があふれたのは。

お腹の赤ちゃんの未来のために、津田さんとの結婚が一番なのを信じて決めたことだから。

これからもずっと幸せだから。

大好きなひとの傍で一緒に死ぬときまで。

本当のことは秘密だけど。

天国のお母さんも安心してね。

大丈夫、津田さんはわたしを守ってくれる人だから。



お父さん、ナオ、ユカへ。
・・・明里より。
< 5 / 22 >

この作品をシェア

pagetop