マスカレードknight ~サンタ マリア~
最後を司会が綺麗にまとめ上げ、出口で津田さんと、ひとりひとりに引き出物を手渡して見送る。

「一弘さん、明里を頼みます」

別れ際に津田さんと握手した、滅多に背広も着ない礼服姿のお父さんは。まだちょっと赤い目をして照れ臭そうに笑った。

「つわりひどくなったら相談のるからねー明里ちゃん」

産科勤務じゃないけど頼もしいユカ。心強い味方。

「あ、ナオちゃんはぜったい口ばっかだから、アテにしないほーがいいよぉ?」

「うっせーよ。俺の愛読書は、ゼクシィよりたまごクラブだっつーの」

軽くゲンコツするフリでユカとじゃれ合うナオ。自分の結婚も秒読みらしい。嬉しい。自分のことより数十倍。

ふと、実家に津田さんが『結婚前提のお付き合いのフリ』で挨拶に来た、1年前の年の瀬を思い出した。あそこから始まって、まさか結婚式をするなんて。

津田さんのことは、そのとき26歳だったわたしの4つ上で、宗ちゃんよりもひとつ上だったのを初めて知ったくらいで。

わたしの前では笑うことがないのに、ナオやユカの前ではふつうに笑うしふつうに喋るし。常識ある大人の社会人ぽく振る舞うから、できたダンナを捕まえてよくやった!・・・って。会うたび感激されたっけ。
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