マスカレードknight ~サンタ マリア~
妊娠したことが分かったとき。初めからその答えを用意してたようにあっさり言われた。

『俺と結婚しろ』

亮ちゃんはわたしを抱き締めて。苦しそうに呟いた。

『・・・・・・すまない』

津田さんが婚約者だって家族に嘘を吐いた以上、お腹の赤ちゃんのお父さんは彼じゃないと辻褄が合わない。ほかの選択肢はなかった。わたしも、亮ちゃんも。

『産んでもいい・・・?』

『・・・明里が俺を赦せるなら』

誰が許さなくても、運命の神様が許さなくても。わたしが亮ちゃんを許さないことなんてない。

『がんばっていいお母さんになるから、まかせて亮ちゃんっ』

勢いよく飛びついたら叱られたっけ。もうわたしだけの体じゃないから気を付けろって。

亮ちゃんは命を狙われる危険な仕事をしてるから、わたしを津田さんに預けてそばにいない。父親でいたくてもいられない。そんな自分を亮ちゃんは責めるかもしれないけど。

わたしは嬉しい。亮ちゃんが命を繋いでくれたことがただ嬉しい。

いつでも死ねなくなったでしょ?

孫の顔を見るまで生きなくちゃ、いけないでしょ?

捨てる覚悟より諦めない覚悟のほうがきっと、亮ちゃんには勇気がいるよね。

だから『ありがとう』しかないの。

この先なにがあっても絶対に謝ったりしないでね。

約束してね?



< 9 / 22 >

この作品をシェア

pagetop