呪われたあやかしと密やかな婚約。【完】
5 知られていた玉

「玉、ちょっと一緒に来い」

休日の昼下がり。

今日は、舞弥はテスト勉強のため友達の家に行っていた。

なんでも友達はアレルギーがあるとかで、念のため壱と玉は来ない方がいいと言うことで留守番をしていた。

玉はバイトのシフトが入っていない日で、壱が神社へ行くときは一緒に行こうと考えていたところだった。

先輩たちとまた遊びたかったので。

「なんだなんだ?」

また先輩たちに会えるぞ、とうきうきの玉。

「たぬきの姿で来てくれ」

「おう?」

詳細を明かさない壱に、玉は少し不思議に思いながらもついていった。

そして。

「大家殿、壱です」

「は?」

壱がノックしたのは、大家の部屋のバルコニーに繋がる窓だった。

「おお。壱さん、いらっしゃい」

大家はたぬきの訪問にも驚いた様子もなく室内から窓を開けて、にこにこしている。

玉は顎が外れそうなくらい驚いていた。

「ちょ、壱!? 大家のじーちゃんじゃねえか!」

思わず玉が吠えると、壱は観念した顔をして玉を見てきた。

「ばれてる。俺たちが舞弥のとこにいること」

「え!?」

大声をあげて玉は固まった。

大家はバルコニーの椅子部分に腰をかけて、おおらかにうなずいた。

「うん、知っとるよ。たぬきさんを二匹、舞弥ちゃんが匿ってるって」

「ええええ!?」

玉は更に驚愕する。まさか大家にばれていたなんて――

「大家殿、俺たちに話とは一体」

壱が、大家に向き直った。玉がガタガタ震え出す。

「お、大家のじーちゃん、俺たちを追い出すとかじゃねえのっ?」

震える玉の頭に、大家が手を載せた。それからなでくりなでくりとされる。

「そんなことはせんよ。舞弥ちゃんにとって大事な家族だからね。玉くん、じいさんとお茶していかないかい」

「え? お茶?」

「俺もこの前そう言われて呼ばれた。俺からも話しておかないといけないことがあるんだ。玉と、大家殿に」

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