あなたには言えない
映画が終わった。
「面白かったね。」
陸玖が言うが、全く内容は入ってこなかった。
陸玖のとなりにいることばかりに意識がいってしまった。

「うん。」
私は立ち上がろうとした。

その瞬間

手が引っ張られ、ソファに倒れ込んだ。
『え?何?』
どうやら陸玖が私の手を引っ張ったようだ。
そして、今、倒れ込んだ私の顔のすぐ目の前に陸玖の顔があった。

私は何が起こっているのかわからず固まってしまっていた。

「好きだ。」
陸玖は私を一直線に見つめてきた。

『え?ちょっと待って?』
私の頭は混乱していた。

そして陸玖は私にキスをしてきた。
『え?え?キス?』

私は反射的に陸玖の体を振り払った。

「あ、ごめん。」
私は強く振り払ったことを謝った。

陸玖はそのことには触れず、
「俺、小さい頃から美月が好きだ。」
と真剣な眼差しで言った。

「わたし・・・」
『私も好き』
と言おうとしたけど、これまでお母さんやお父さんが良くしてくれて、
楽しく暮らせていたことが走馬灯のように駆け巡った。

「ごめん。陸玖の気持ちにはこたえ・・・」
途中まで言いかけたところで
「わかってる。美月の気持ちは十分わかってる。
でも、俺の気持ちは美月には知ってて欲しい。」
陸玖はそう残し、部屋に戻っていった。

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