あなたには言えない
結局、半年間の闘病の末、母は他界してしまった。

親戚に預けるという話が出ていたらしいが、
陸玖のお母さんは「美月ちゃんを育てる」と断言し、
私を家に連れて帰ってくれた。

陸玖のお母さんが陸玖に
「これから美月ちゃんも、陸玖の家族になって一緒に暮らすの」話した。
陸玖は「家族になるなんて嫌だ」と泣きながら拒んでいた。

私はこの時、『陸玖は私のこと嫌いなんだ』と思ったのだ。

陸玖のお父さんは総合病院の院長だし、
陸玖のお母さんは私の母と同じ看護師で忙しそうにしていたから、
できるだけ家事を手伝うようにしていた。

「そんなにやってくれなくてもいいのよ。」
って言われたこともあったけど、私は好きでやっていたのだ。
そしてできるだけ迷惑かけないように暮らしていた。

窮屈に感じたことはないし、陸玖のお母さんやお父さんは私にとても良くしてくれた。
誕生日にはケーキやプレゼントをくれたり、行事の度にパーティーをしたり、とても幸せな生活だった。

でも陸玖とは、一緒に住むようになってから話さなくなった。
陸玖は『私が嫌い』なんだから、
陸玖の生活の邪魔をしてはいけないと思っていたのだ。
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