厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
       *

「陛下っ……もう、もう無理です……!」
「まだまだこれからだろう。夜は長いんだ、焦ることはない」

 フランは、怖れを抱きながらも惹かれつつある皇帝の腕の中で、存分に可愛がられ――もとい、頭を撫で繰り回されていた。
 ライズはベッドの上に座して、ヘッドボードに背を寄りかからせている。
 そんな彼の膝の上に座らせられ、背後から抱きしめられているフランの姿は、熱烈な寵愛を受けているようにも見えるのだが――彼の意図は、決して色めいた意味ではなかった。
 つまるところ、また変身して獣の姿になれと言うのだ。

(覚悟を決めたのに……)

 皇帝に対して不敬だとは思うが、フランはちょっとだけむくれている。
 急に黙り込んだフランの様子が気になったのか、ライズは囲っていた腕を少し緩め、体の位置をずらしてこちらの顔を覗き込んできた。
 吐息がかかるほど間近に彼の秀麗な顔があって、うっと喉が詰まる。これはこれで心臓が持たない。刺激が強すぎて目の前がチカチカする。

「おかしいな。この間はすぐに変身したのに……。まさか慣れたのか?」

(あまりのことに呆然として、そんな境地は吹っ飛んでしまったんです……!)
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