厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
皇太后が、心底呆れたような溜め息を漏らす。
「ずいぶんと評判の悪いこと。……あの堅物の息子がようやく動いたと思ったのに、なんで、よりにもよってあなたなのかしら」
がっかりとした声が、重くのしかかった。故郷で何度も味わった虚しさが、胸に湧き上がってくる。
努力しても認めてもらえず、劣等感に苛まれた日々。帝国に来てもなお否定されるなんて、いっそ消えてしまいたくなる。
けれど自分のせいで、あの理知的なライズが乱心したと疑われてはたまらなかった。彼は突飛な行動に出るけれど、いつも確固とした意志を持って動いている。そしてその裏に垣間見える優しさも、きっと嘘ではない。
フランは顔を上げ、真っ直ぐに皇太后の目を見つめて言った。
「恐れながら、皇太后様。ライズ陛下は、色仕掛けに惑わされるようなお方ではありません。そして私も、恥ずべき行為はしておりません。取るに足りない私を評価してくださった陛下のため、望まれるのならば、お力になりたいと思っています」
「……あなた」
息をのんだ皇太后がなにか言いかけたとき、背後から凛とした声が響いた。
「――フラン。ここにいたのか」
「ずいぶんと評判の悪いこと。……あの堅物の息子がようやく動いたと思ったのに、なんで、よりにもよってあなたなのかしら」
がっかりとした声が、重くのしかかった。故郷で何度も味わった虚しさが、胸に湧き上がってくる。
努力しても認めてもらえず、劣等感に苛まれた日々。帝国に来てもなお否定されるなんて、いっそ消えてしまいたくなる。
けれど自分のせいで、あの理知的なライズが乱心したと疑われてはたまらなかった。彼は突飛な行動に出るけれど、いつも確固とした意志を持って動いている。そしてその裏に垣間見える優しさも、きっと嘘ではない。
フランは顔を上げ、真っ直ぐに皇太后の目を見つめて言った。
「恐れながら、皇太后様。ライズ陛下は、色仕掛けに惑わされるようなお方ではありません。そして私も、恥ずべき行為はしておりません。取るに足りない私を評価してくださった陛下のため、望まれるのならば、お力になりたいと思っています」
「……あなた」
息をのんだ皇太后がなにか言いかけたとき、背後から凛とした声が響いた。
「――フラン。ここにいたのか」