厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
「うん?」

 思ったよりも至近距離に見目麗しい顔がある。目と目が合って、ぎゅっと胸が締めつけられた。ライズは上機嫌にフランの体を抱え直し、視線を伏せて笑う。その仕草は、とても優雅でステキだ。

「おまえは甘い物が好きだったな。……ほら」

 お茶請けに用意してあったクッキーを指でつまんで、口の前に持ってきてくれる。
 思わず「あーん」と口を開け、はむっと頬張って、もぐもぐと味わった。小麦粉とお砂糖のハーモニー。美味しいし、幸せだ。

 口元についた食べ物のカスを、硬い指でくしくしと拭われる。こんなに可愛がられるのは生まれて初めてで、つい流されてしまう。
 嬉しいけれど、これに甘んじていてよいのだろうか。

(なんだか妹みたいに扱われているというか……いえ、むしろ愛玩動物?)

 心の中に、大きな引っかかりを覚えた。
 もっと違う形で、必要とされたい。ひとりの女性としても、好きになってほしい。
 釈然としないまま、もどかしさだけがむくむくと膨れ上がっていく。

 帝国の太陽たる人の心を掴むには、どうしたらいいのだろう――。
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