厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
       *

「輝かしきヴォルカノ帝国に、栄光あれ!」
 きびきびとした帝国軍隊長のかけ声に合わせ、無数のブーツの踵が地面を打ち、タップのリズムを刻む。

 儀礼的に行われる軍事パレードは、帝国内外に権威を示し、軍人たちの士気を高める重要な行事だ。戦うことのできない住民や文官は、パレードを見守りながら感謝の気持ちを込めた拍手を送り、お祭り的な盛り上がりを楽しんでいる。

「うわぁ……すごいわね!」

 フランはサリーと一緒に、石造りのステージの端に用意された観覧席へと入った。
 城の関係者用の特等席にはすでに皇太后のほか、カーネリアやブルーネル、コーラルたちが目を光らせている。
 フランは彼女らから少し離れた席に落ち着くことにした。メインをうしろから眺める形で角度的にはよくないが、距離はそう遠くないから音はよく聞こえるし、扇形に広がる会場の全貌を見渡すことができる。
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