厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 前もって街頭パレードをこなした兵士たちは、続々と終着点であるステージ前の広場に集結していた。その動きは整然として、一分の乱れもない。
 肉体と精神を鍛える厳しい訓練の賜物であろうことは想像に難くなく、その規模もレベルも、フランが知るものとは格段に違っていた。
 シャムール島に攻め入られたときのことを思い出すと背筋が冷たくなったが、それよりも――屈強な軍を統率する唯一の人、荘厳な鎧を纏って一段高いところに立つ皇帝ライズは誰よりも輝いていて、吸い寄せられるように目を奪われてしまう。

(格好いい……)

 ライズは幼い頃から武人としての才に秀でていたらしいが、それに甘んじず、常に過酷な訓練を欠かさなかったという。
 そんな彼が皇帝でなかったら、この景色はまったく別のものになっていただろうと、気持ちの良い風に吹かれながら、フランは思いを馳せた。

 今でこそ安定と繁栄を見せるヴォルカノ帝国だったが、ほんの数年前には暗黒時代と呼ばれる動乱期もあったらしい。火種となったのは、ライズの父である先代皇帝が崩御した際に勃発した皇位継承争いだ。
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