厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
「毒だな。この杯には、毒が仕込まれている。……侍女よ。今、勝手に持ち場を離れようとしたのはなぜだ?」
その途端、無力に見えた侍女は別人のように表情を歪め、激しい抵抗を見せた。
杯の中身が毒と知っていて行動に及んでいたらしい彼女は、流れるように懐から光るものを取り出し構えると、至近距離からターゲットであるライズに襲いかかる。
けれどもライズは刺客である侍女の反撃を許さず、淡々と相手の動きを封じ、気絶させると、駆けつけてきた兵士に身柄を引き渡した。
場が騒然とする中、ぱっと振り返ったライズは足早にフランの元へと歩み寄る。
そうして、地面にへたりこんだままでいたフランに、手を差し伸べた。
「フラン――よくやった」
(……っ)
ふわりと目元を和らげた、陽光のように温かい眼差し。その眩しい笑顔に、射抜かれたように動けなくなってしまった。
「どうした、怪我をしたか?」
ライズが怪訝な顔をしたので、フランは我に返った。慌てて彼の手を借り、立ち上がる。
「あっ……いえ、陛下がご無事でよかっ……、きゃあっ!」
ライズは目の前でその長身を屈めたと思うと、フランの膝の裏と背中に手を回し、軽々と横抱きに抱え上げた。
そのままステージの中央へと歩いて戻ると、待っていたギャラリーへ高らかに宣言する。
「皆の者、待たせたな。――我がヴォルカノ帝国に栄光あれ!」
中断されていた式典は皇帝の宣言により大歓声をもって幕を閉じ、フランは至高の腕に抱きかかえられたまま、聴衆に見送られたのだった。
その途端、無力に見えた侍女は別人のように表情を歪め、激しい抵抗を見せた。
杯の中身が毒と知っていて行動に及んでいたらしい彼女は、流れるように懐から光るものを取り出し構えると、至近距離からターゲットであるライズに襲いかかる。
けれどもライズは刺客である侍女の反撃を許さず、淡々と相手の動きを封じ、気絶させると、駆けつけてきた兵士に身柄を引き渡した。
場が騒然とする中、ぱっと振り返ったライズは足早にフランの元へと歩み寄る。
そうして、地面にへたりこんだままでいたフランに、手を差し伸べた。
「フラン――よくやった」
(……っ)
ふわりと目元を和らげた、陽光のように温かい眼差し。その眩しい笑顔に、射抜かれたように動けなくなってしまった。
「どうした、怪我をしたか?」
ライズが怪訝な顔をしたので、フランは我に返った。慌てて彼の手を借り、立ち上がる。
「あっ……いえ、陛下がご無事でよかっ……、きゃあっ!」
ライズは目の前でその長身を屈めたと思うと、フランの膝の裏と背中に手を回し、軽々と横抱きに抱え上げた。
そのままステージの中央へと歩いて戻ると、待っていたギャラリーへ高らかに宣言する。
「皆の者、待たせたな。――我がヴォルカノ帝国に栄光あれ!」
中断されていた式典は皇帝の宣言により大歓声をもって幕を閉じ、フランは至高の腕に抱きかかえられたまま、聴衆に見送られたのだった。