厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

ざわめく帝国と乙女心(3)

 耳を澄ませば廊下のほうから、騒がしい声が聞こえてくる。
 ライズは厳しい表情に戻り、フランの横にあった椅子にどさりと腰かけた。クリムトがその傍らに立ち、騒々しい物音が近づいてくるのを皆で待つ。

 間もなく侍従が止めるのも聞かずに押しかけてきたのは、明らかに身分の高そうな貴族の男女が数名。
 一番前に立つのは、どっしりとした体を高そうな衣装で包み、たくさんの勲章を胸につけた四十代くらいの男性だ。そのうしろには似たような風格をした男性がふたり、付き従っている。
 さらにあとから入室してきたのは、赤、青、黄色のドレスが鮮やかな、顔をよく知る女性陣だった。カーネリア家、ブルーネル家、そしてコーラル家の令嬢たちである。

「陛下、ご無事でなによりでございました。公爵のレイモン・カーネリアでございます」

 中心の人物が一歩前に出て、上半身を折り、礼をする。続いてふたりの貴族もそれにならい、それぞれブルーネル侯爵、コーラル伯爵と名乗った。
 三人の男性貴族は、それぞれの令嬢の父親にあたる人物らしい。顔立ちも令嬢たちとよく似ている。三令嬢も、保護者がいるためか強気の表情を浮かべていた。
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